膵臓がんに「1日1回の飲み薬」が登場。生存期間は約2倍、ただし1か月600万円

「薬で狙えない」と言われ続けた遺伝子変異RASを持つ膵臓がんに、初めて本格的に届く飲み薬が誕生しました。臨床試験では生存期間が化学療法の約2倍に延びた一方、薬価は月約600万円。この薬の仕組みと数字の正しい読み方、そして日本での見通しまでを整理します。
山田悠史 2026.09.02
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米食品医薬品局(FDA)は2026年8月26日、転移性膵臓がんの新しい治療薬ダラクソンラシブを承認しました。1日1回の飲み薬で、承認の根拠となった第3相試験では、生存期間の中央値が化学療法の6.7か月に対し13.2か月と、約2倍に延びています。治療の進歩が乏しかった膵臓がんでこれほどの差が示されるのは異例です。なぜこの薬が「画期的」と呼ばれるのか。それを理解するには、まず膵臓がんという病気の難しさから見ていく必要があります。

「薬で狙えない」とされてきた標的・RAS

膵臓がんの大半を占める膵管腺がんは、発見が遅れやすく、治療の選択肢も限られてきました。その難しさの一因が、RASという遺伝子ファミリー(とくにKRAS)の変異で、膵臓の腫瘍の90%以上でこれが原因になっています。ところがRASのタンパク質は表面がなめらかで、薬が引っかかる「くぼみ」がありません。そのため長年、研究者の間では「薬で狙えない標的」と考えられてきました。しかし、今回承認されたダラクソンラシブはその障壁を乗り越えました。「RAS(ON)マルチセレクティブ阻害薬」という新しいタイプの薬で、特定の変異型ひとつだけを狙うのではなく、活性化した状態のRASタンパク質を"のり"のように包み込み、増殖を促すシグナルを止めます。

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