「これは偽薬です」と伝えても効く? 「正直なプラセボ」が切り開く医療の未来
「成分のない偽薬です」と正直に伝えても、なぜか症状が改善する。医療の常識を覆す「オープンラベル・プラセボ」が、慢性疼痛などの新たな治療法として注目されています。脳内で起きている鎮痛メカニズムから、「エセ医療」を助長しかねないという倫理的な懸念まで、その驚くべき可能性と課題に迫ります。
山田悠史
2025.11.26
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「プラセボ(偽薬)」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか。おそらく多くの人が、新薬の臨床試験で使われる「効果のないニセモノの薬」といったイメージを持つでしょう。そして、「プラセボ効果」は、患者さんが「本物の薬だ」と信じ込むことで生じる、つまり、「騙すこと」がその効果の前提条件だと、長年考えられてきました。
しかし、もし医師が患者さんに「これは砂糖玉で、薬としての成分は一切入っていません」と正直に伝えた上で投与したら?
この素朴でありながら常識破りの疑問に挑んだのが、ハーバード大学医学部のカプチャック教授です。彼が15年前に行った研究は、医療界の常識を揺るがす驚くべき結果を示しました。なんと、偽薬だと知らされて飲んだ患者さんでさえ、症状の改善が見られたのです。この「正直なプラセボ(オープンラベル・プラセボ)」と呼ばれるアプローチは今、慢性的な痛みやうつ症状の治療において、従来の医療を補完する新たな可能性として、大きな注目を集めています(1)。
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